みなさん、こんにちは。
いつもブログをお読みいただき、ありがとうございます。
「壊れてしまったけれど、どうしても諦めきれない……」
そんな、お客様の深い思い入れが詰まったお品物の修理をご依頼いただきました。
お持ち込みいただいたのは、こちらのとても素敵なベルトです。

魚(金魚)をモチーフにした、個性的で可愛らしいバックルですよね。
実は、バックルの金具から帯が完全に外れてしまっている状態でした。
最初にお写真をいただき、軽くお尋ねをいただいた際、私はこうお伝えしました。
「普通にロウ付けや溶接をしてしまうと、本体が溶けてしまうので、簡単には修理ができないんですよ」と。
お客様は当初、「簡単にパッと付けてもらえるのでは?」と思われていたご様子でした。
実は、この飾り部分(金魚)の素材は「アンチモニ」という金属。
非常に熱に弱く、一般的な溶接をしようとすると、ハインダのように低い温度でドロドロに溶けて、ただの金属の塊になって壊れてしまうのです。
一見シンプルに見える修理ほど、実は他所では真似できない高度な技術が必要になります。
今回は、ベルトを留める真鍮製の棒部分を別の金属で補強してロウ付けを行い、そこから細心の注意を払って、時間をかけ慎重に本体へと溶着させました。

ご覧の通り、ベルトを通すパーツも元通り、きれいに機能性と美しさを取り戻しました。
実はこのお直し、ベルトをご購入された際のお値段よりも、修理代金の方が高くなってしまうものだったのです。
私たちは、このような大変難しい修理を行う際、技術の難易度だけで料金を決めているわけではありません。
「お客様が、そのお品物に対してどれくらい忘れられない大切な思い出を持っているか」
それによって、お受けする私たちの責任の重さ、そして代金が決まります。
再び使えるように修理を行うということは、お品物に宿る思い出も壊さずに蘇らせるということだからです。
「一度、お家に持ち帰って落ち着いてご検討なさってくださいね」とお伝えし、その日はお帰りいただきました。
それから数日後。
お客様から、再びメールをいただきました。
「どうしてもこの品物についている思い出がなくなるのは寂しい。我慢できませんので、修理をお願いします」
そのお言葉をいただいた時は、職人として本当に嬉しかったです。
すぐにお品物をお預かりし、一瞬も気が抜けない緊張感の中、じっくりと時間をかけて修復いたしました。

無事に修理が完了し、お客様にお渡しした時。
思い出が消えずに美しく蘇ったベルトを見て、本当に、本当に喜んでくださいました。
その笑顔を見た瞬間、スタッフ一同、心から幸せな気持ちになりました。
大切なアクセサリーや革小物は、ただの「モノ」ではなく、一緒に過ごしてきた「思い出の器」です。
「お気に入りだけど壊れてしまった」
「他のお店で修理を断られてしまった」
そんなお品物がございましたら、諦めて処分してしまう前に、ぜひ一度私たちにご相談ください。
お客様の想いに寄り添い、丁寧にお直しいたします。